こんばんは。
仕事の帰りでした。
駅の駐輪場に停めている愛車〈ビーノ〉のメーターを見つめながら、いよいよやらなきゃならない使命感に苛まれる。
同時に、娘ちゃんの誕生日で夕飯を待っているであろう家族の顔も浮かぶが、今夜やらねば次は難易度が上がる事は明白だ。
それはいつもと変わらぬ通勤路を普段通りに走っていては足りないものだった。
家庭を犠牲にしてまでの言い訳は、バイク乗りの性とでも言うしか言葉が見つからない。
そんな後ろめたい言い訳が、いつしか葛藤に変わり、ハンドルを握る手には無意識に力が入る。
幹線道路を走り出して何分経ったのだろう、ほどなく交通量が少ない狭い住宅街へ静かに進入を開始する。
碁盤の目を縫うようにタイヤの接地感を確かめるように何度かクランクを繰り返し、それでも満たされないと、、、堪りかねて人目のつきにくい駐車場へと飛び込んでしまう。
その人の気配のない駐車場で小さな円を描くように調子良くローリングを繰り返し、3周ほど回ったのだろうか、それは静かに訪れた、、、
今まで遠くを見ていた視野は一気に狭まり、ある一点を注視する為に神経を研ぎ澄ます。
脳からの伝達は右手を動かし、愛車〈ビーノ〉を極低速走行へと追い込み、絶妙なタイミングでフロントブレーキを握らせた。
メーターは無事111111のゾロ目を刻む。
思わず心の声がおめでとうのつもりが『ハッピーバースデー❗』と間違ってメモリアルを刻んだ。
満たされたバイク乗りはお誕生日の娘ちゃんが待つ家路へと急いだ。
それでは、、、。